子どもが自ら考え、聞く耳を育む 肯定的な問いかけのコミュニケーション術
子育てにおいて、お子さんがなかなか話を聞いてくれず、戸惑いや難しさを感じていらっしゃる方は少なくないかもしれません。つい「どうして聞かないの」「早くしなさい」と感情的な言葉が出てしまうこともあるでしょう。しかし、一方的な指示だけでは、お子さんの「聞く耳」を育むのは難しい場合があります。
お子さんが自ら考え、納得して行動できるようになるためには、親からの「問いかけ」が非常に有効なコミュニケーション手段となります。問いかけは、お子さんの主体性を尊重し、考える力を育むと同時に、親子の信頼関係を深めるための鍵です。
この記事では、お子さんが自ら考え、聞く耳を育むための肯定的な問いかけのコミュニケーション術をご紹介します。具体的な声かけの例を交えながら、今日から実践できる方法をお伝えします。
問いかけが「聞く耳」を育む理由
お子さんが親の話を聞かないと感じる時、その背景には「聞く意味を感じない」「一方的に言われているだけ」といった気持ちが隠されている場合があります。問いかけによるコミュニケーションは、お子さんの内面に働きかけ、聞く姿勢を自然と促します。
- 主体性を引き出す: 問いかけは、お子さん自身が考え、答えを見つけるプロセスを促します。これにより、「やらされている」という受動的な態度から、「自分で決める」という主体的な態度へと変化していきます。
- 考える力を養う: 何かを問われることで、お子さんは状況を理解し、自分の意見を持つ練習をします。これは、問題解決能力や判断力を育む土台となります。
- 対話の習慣を作る: 問いかけから始まる会話は、親子の間に自然な対話の流れを生み出します。お子さんは自分の言葉が受け止められていると感じ、安心して話を聞き、自分の意見を伝えられるようになります。
効果的な問いかけの基本原則
お子さんの「聞く耳」を育むためには、いくつかの問いかけの原則があります。これらを意識することで、お子さんの反応は大きく変わる可能性があります。
1. 具体的でシンプルな言葉を選ぶ
抽象的な指示ではなく、お子さんが具体的に何をすべきか想像しやすい言葉を選びましょう。
- 避けたい例: 「ちゃんと片付けなさい」
- 肯定的な問いかけの例: 「おもちゃはどこにしまおうか」「どれからお片付けする?」
2. 選択肢を与える問いかけを取り入れる
お子さんに選択の機会を与えることで、指示ではなく「自分で選んだ」という感覚が芽生え、自ら行動に移しやすくなります。
- 避けたい例: 「早くお風呂に入りなさい」
- 肯定的な問いかけの例: 「お風呂と歯磨き、どちらを先に済ませる?」「お風呂で使うシャンプー、どっちの香りが良い?」
3. オープンな質問で考えを引き出す
「はい」「いいえ」で終わるクローズドな質問ではなく、お子さんの意見や感情を引き出すオープンな質問を心がけましょう。
- 避けたい例: 「これ食べたい?」
- 肯定的な問いかけの例: 「今日の夕食、何が食べたい気分?」「この遊び、どうして楽しいと思う?」
4. 子どもの気持ちを汲み取る問いかけ
お子さんの感情に寄り添い、その気持ちを理解しようとする姿勢を示すことで、信頼感が深まり、心を開きやすくなります。
- 避けたい例: 「泣かないで」「怒らないで」
- 肯定的な問いかけの例: 「今、どんな気持ち?何が悲しかったのかな」「〇〇したかったんだね。その気持ち、パパ/ママもわかるよ」
5. 肯定的なフィードバックを伴う
お子さんが何かを成し遂げた時や、良い行動をした時には、具体的な言葉で肯定的にフィードバックしましょう。その際、どのようにできたのかを問いかけることで、お子さん自身の成功体験が強化されます。
- 肯定的な問いかけの例: 「よくできたね。どうやってできたの?」「〇〇したから、こんなに綺麗になったんだね。すごいね」
状況別、具体的な問いかけの例
日々の生活の中で、様々な状況に応じた問いかけの例をご紹介します。
行動を促したい時
- 「〇〇する時間だよ。何から始めようか?」
- 「これをやったら、次に何をする予定だったかな?」
- 「あと〇分で出発だけど、今できることは何かな?」
ルールやマナーを伝えたい時
- 「〇〇すると、どうなると思う?」
- 「みんなで気持ちよく過ごすために、どうしたら良いかな?」
- 「これを使ったら、次使う人が困らないようにどうしておいたら良いだろう?」
気持ちに寄り添い、共感を伝えたい時
- 「今、困っていることはある?お手伝いできることはあるかな?」
- 「〇〇して悲しかったんだね。どうしたら気持ちが楽になるかな?」
- 「頑張りたい気持ちと、休みたい気持ちがあるんだね。どうしたら良いかな?」
反省を促したい時(詰問にならないように注意)
- 「今何が起こったかな?教えてくれる?」
- 「どうすればよかったと思う?」「次はどうしたい?」
- 「〇〇すると、周りの人はどう感じるかな?」
問いかけを実践する上での注意点
効果的な問いかけも、使い方を間違えると逆効果になることもあります。以下の点に注意しながら実践してみましょう。
- 待つ姿勢を大切にする: お子さんがすぐに答えを出せなくても、焦らずに待つ時間を与えましょう。考え込む時間も、お子さんにとっては大切な成長の機会です。
- 感情的にならない: 親が感情的になると、お子さんは萎縮してしまい、正直な気持ちを伝えられなくなります。常に落ち着いたトーンで接し、感情的になりそうな時は一呼吸置いてみましょう。
- 聞き役に徹する: 問いかけたら、お子さんの言葉を最後までしっかりと聞くことが重要です。途中で遮ったり、意見を否定したりしないようにしましょう。
- 質問攻めにしない: 問いかけばかりでは、お子さんは質問攻めにされていると感じて疲れてしまいます。一方的な質問ではなく、会話のキャッチボールを意識し、親も自分の意見を適度に伝えましょう。
まとめ
お子さんの「聞く耳」を育むためには、一方的な指示ではなく、肯定的な問いかけを通じたコミュニケーションが非常に有効です。問いかけは、お子さんの主体性、考える力、そして親子の信頼関係を育む土台となります。
今日からぜひ、具体的な声かけの例を参考に、お子さんへの問いかけを実践してみてください。すぐに劇的な変化が見られなくても、日々の小さな積み重ねが、お子さんの成長と、より良い親子関係を築く力となるでしょう。親御さんご自身の気持ちも穏やかに保ちながら、お子さんとの対話を楽しんでみませんか。